自称横浜のシティボーイである自分には、下町と呼ばれる地域はとっても新鮮で、刺激的。
きのうの話。
浅草で思ったよりも早く目的を達成してしまったので、北上。
かの有名な吉原に行ってみた。
限られた区画の中に、きらびやかなお店がひしめき合う。
黒服の男性達が静かに道の両側に居並び、昼間でも送迎車がビュンビュン行き交っていた。
どこの建物も古く、昭和の香りを色濃く残していたのはなぜだろう。
老舗なのはわかるが、清潔感やクリーンなイメージも大切な業界、儲かっているはずなのに建て直しをしたりはしないのだろうか。
「喫茶店」と看板があるが、絶対に喫茶業だけではないであろう喫茶店の存在など、そこだけに長らく続く、独自の文化が確実に存在していた。
何百年と前からずっとこの地で、様々な色欲が渦巻いてきたかと思うと…その思いの歴史にワクワクした。
色欲が可視化できたら、350年余滞積した分、きっとここだけ濃いピンク色なんだろうな。
アッちなみに!遊んでいません。
突発的な訪問であったので…もし本気で行くのなら、今の時代、しっかりとネットやら何かで下調べして行く方が賢明だろう。
そのままさらに北上すると、ドヤ街といわれる山谷にたどり着いた。
やはりここも他の地域とは確実に雰囲気が違う。
閑散とした商店街。
開いてるお店はほとんど無く、人もいない。
すっかりゴミ置き場となったコイン遊具。
新聞紙がまるで映画のワンシーンのように風に飛ばされていた。
所々お店のシャッターに貼ってある、
“あしたのジョーのふるさと祭り”
の開催は、昨年10月…。
町おこしのためのポスターが、逆に町の寂しさを際立たせる結果になっている皮肉が、なんともらしかった。

商店街から路地を覗けば、向こうにはおじさんともおじいさんともとれる年老いた男性がゆっくり歩いている。
ここだけまどろむように時が流れていて、何か不安を抱かずにはいられなかった。
最近では海外からのバックパッカー等が訪れ、クリーンで明るいイメージになったなんて話を聞いていたが、そんな雰囲気は微塵も感じられなかった。
人はその土地からなかなか離れられないし、だからこそその土地はなかなか変わるなんてことはできない。
それが歴史というものであるし、それがおもしろいところでもありもどかしいところでもあり…今日はそれを痛感させられた。

華やかな浅草からわずか数分、しかも平坦な道をただ真っすぐ歩くだけで、こんなにも色の違う街を廻れるなんて、東京は、下町は、本当におもしろい。
ただこの下町、横浜出身でそこから移り住んだ上司に言わせると、住むとものすごく辛いらしい。
文字通り下町で、坂がないので、自分が“地べたを這いずり回っている”感覚がするそうだ。
坂がいっぱいあって、少し歩けばすぐに何かを見下ろせる環境にいた人間からは、耐えられないと。
また、地方から下町人情に憧れて移り住んだ職場の女の子が、あまりにも近過ぎるご近所付き合いに耐え切れなくなって引っ越したという話も聞いたことがある。
憧れは憧れのまま、ほどよい距離感でいるのがいいのかな、とも思うのであった。
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